僕は病院や福祉施設などを訪問し、音楽を届けるという活動をライフワークとして行ってきました。
しかし、「音楽は好きだけどコンサートには行けない」「物理的バリアもあるし、人目も気になる」と感じている方もたくさんいるのが現状です。
音楽を届ける立場のピアニストとして、コンサートを行う者として、誰もが音楽を楽しめる環境を提供しないといけないと考え、2018年に「小さき花の音楽会」Vol.1を開催しました。
「小さき花の音楽会」はあくまでも「普通のコンサートである」ということをコンセプトのひとつとして掲げています。それは、障害などの困難を抱えて生きる方々が一人のオーディエンスと
して音楽を楽しみ「普通のコンサート」に行くという社会参加をすることに意味があるからです。そして、「コンサートに参加する」「社会参加をする」という、この当たり前の権利を守るためには「物理的なバリアフリー」と同時に「心のバリアフリー」というものが欠かせないと考えました。
勇気を出してどこかに行くことができたとしても、他人の視線が気になるなど「目に見えないバリア」のようなものを感じてしまったり、肩身の狭さのようなものを感じてしまっては意味がありません。
「小さき花の音楽会」では毎回「障害や困難があるないに関わらず、その日たまたま隣にいあわせた方と少しだけ気遣いあったり、声かけをしてみたり、場合によっては助けあい譲りあったりして楽しむコンサートにしましょう!」と、「心のバリアフリー」の具体的な実践方法をみなさんに提案しています。「物理的なバリアフリー」については、会場がバリアフリーであることはもちろんですが、通常の風邪でも重症化してしまう基礎疾患を抱えた方々の不安を減らすべく、開催時期は感染症流行時期避ける、観客やスタッフのマスク着用、頻繁にトイレに行く必要がある方のために演奏中の出入り自由、医療機器を外せない方々や障害特性により声が出てしまう方のために「機械音の発生OK」「声を出してもOK」などの事前告知など様々な対策を行っています。バリアフリーコンサートの開催が決まり、ある知り合いの障害を持つ子どもの親御さんを「小さき花の音楽会」へお誘いしたのですが、その方は「一生コンサートになんか行けないと思ってた」と言って喜んでくれました。そういった方々に「このコンサートなら行ける」と思っていただき、「コンサートに参加することが当たり前」となるよう、この「小さき花の音楽会」を今後も末永く続けていきたいと考えています。

音楽を楽しむ心に障害や病気や国境は関係ありません。そして音楽には心を解放してくれる力があります。音楽を愛する方がバリアなく音楽を楽しめる社会や空間を実現していくことへのご協力、ご理解を賜れますと幸甚です。